十七世紀を含む初期近代という時代は、近代科学の基礎が築かれ、発展を始めた時代であると同時に、自然魔術や妖術や錬金術が広く論じられた時代でもあり、この時代の著作には現代に通じる問題意識と、いわば失われた世界観とでもいえるものが奇妙に併存しています。このような近代と前近代が複雑に入り混じった自然観、人間観を垣間見ることができるのが、この分野のおもしろさとでも言えるでしょうか。

上記の「おもしろさ」が、この分野を選んだ理由でもあるわけですが、それに加えて、この分野の作品が専門家・研究者以外にはほとんど読まれていないというのも理由の一つです。十七世紀英国の多様で豊かな散文作品がより広く読まれるようになればと思っています。