日本臨床宗教師会認定教育プログラム
日本スピリチュアルケア学会「スピリチュアルケア師」認定教育プログラム
「臨床宗教師(interfaith chaplain)」という言葉は、欧米の聖職者チャプレンに相応する日本語として、岡部健医師が2012年に提唱した。「臨床宗教師」は、布教・宗教勧誘、営利を目的とせずに、相手の価値観、人生観、信仰を尊重しながら、苦悩や悲嘆を抱える人々に寄り添い、生きる力を育む宗教者である。臨床宗教師は、医療福祉機関等の専門職とチームを組み、宗教者として全存在をかけて、人々の苦悩や悲嘆に向きあい、かけがえのない物語をあるがまま受けとめ、そこから感じ取られるケア対象者の宗教性を尊重し、「スピリチュアルケア」と「宗教的ケア」を行う。臨床宗教師は、宗教宗派を超えた協力関係(interfaith partnership)を結ぶ。宗教者間の調和によって、宗教にまつわる「信者獲得」や「対立」というイメージも払拭される。
※なお、臨床傾聴士については、別途、「臨床傾聴士研修」応募要項をご覧ください。
「臨床宗教師・臨床傾聴士研修」は、宗教者として全存在をかけて人々の苦悩や悲嘆に向き合い、そこから感じ取られるケア対象者の宗教性を尊重し、病院、社会福祉施設、地域社会、被災地などの公共空間で実践可能な「スピリチュアルケア」と「宗教的ケア」を、理論と臨床実習、実習指導を通して学ぶことを目的とする。
スピリチュアルペインとは、老病死の苦しみに直面して、自分が自分でなくなり、自己の支えが揺らぎ、崩壊して生きる道が見出せない苦しみである。「なぜ私がこんな目に遭わなければならないのか」「私の人生は何だったのか」「死ぬのが怖い」と思い悩み、救いを求める気持ちである。重要なことは、自己の物語を喪失するスピリチュアルペインは、世俗を超越し、生死を超えた真実に気づく縁にもなる。苦悩は、自らの夢や願いがあるから生じ、悲しみは愛情を受けているから生まれる。
スピリチュアルケアは、その人の未解決な問題が解決されるように援助し、苦悩のなかで見出す物語に寄り添う。その人の支えとなるものとのつながりを再確認することを通して、対象者の心の安定、回復、成長を見守ること、またはセルフケアである。
ケアの原点に、「何かをすることではなくそばにいることである ”Not doing, but being”」という言葉がある。絶望的な状況に置かれている人に、何もできなくても心を寄せて、話を聞くだけでも支えになることがある。寄り添うとは、特別な技術や個人の能力を役立てて、相手の心を分析し支えるのではない。言うに言えない人々の悩みに向き合い、その場にいることである。相手の感情に焦点を当てて、腹を据えて聞こうとすることである。
宗教的ケアとは、相手が宗教的ケアを求めていることを宗教者が確認したうえで、相手の信仰している宗教宗派を尊重して傾聴する。宗教的ケアとは、大いなる慈しみにいだかれて相手の苦悩に向き合い、その人が苦悩のなかで見出す心の物語に学び、苦悩を超える宗教的真実を分かち合う。臨床宗教師は、一人ひとりの解決のつかない課題に向き合い、過程を大事にして、相手と共に答えを探すことを覚悟した宗教者である。
日本臨床宗教師会の教育目標に準拠して、実践真宗学研究科の臨床宗教師・臨床傾聴士研修は、六つの具体的目標を掲げる。
自分の宗教宗派の教義や世界観を前提として対象者に接するのではなく、まず相手の声を真摯に聴き、悲嘆を受け止め、自然に顕れてくる宗教性を尊重することの重要性を学び、それぞれを現場での実践やグループワークを通じて体得することを目指す。
被災地などでの追悼法要を各宗教宗派の儀礼と世界観を尊重して合同で行い、宗教者の社会実践と宗教協力について、他宗の宗教者と目的を一にして共に学び合う。自らの信仰をふりかえって大切にしつつ、他者の信仰を尊重するという寛容な姿勢を培う。自らの気づきを宗教者間で共有する。
「病者を看取ることは自己を看取ることである」(『増壱阿含経』巻40、大正大蔵経2巻746c)と釈尊は説いた。相手を自分のことのように見守る姿勢が大切である。相手に寄り添うには、自らの依りどころとする宗教的死生観を培う必要がある。
臨床宗教師は、医療福祉機関などの公共機関で、医師、看護師、栄養士、介護士、保育士などの専門職とチームを組み、苦悩する人々に寄り添う。宗教者が公共的存在として活動するためには、医療福祉機関の専門職を理解し、相互に理解しあう配慮が必要となる。宗教者としてのアプローチが医療福祉機関の専門職にどのような影響を与えるか、自己の言動を見つめ、慎重かつ柔軟な働きかけを学ぶ。
他の宗教宗派の儀礼や世界観を学び、さまざまな宗教者との同一性と差異性についての理解を深める。宗教的理念を背景にした医療福祉機関で行われている宗教儀礼やお別れ会等に参加し、宗教者と共に礼拝することを通して、各宗教宗派の宗教的ケアの提供方法を学ぶ。特に、医療福祉機関における臨床宗教師(ビハーラ僧)がどのように患者とその家族に寄り添い、専門職と協力しているかを学ぶ。また、ケア対象者の求めに応じて適切な宗教者や宗教組織を紹介する方法や亡き後の葬儀や墓地などの相談対応について学ぶ。
仏教の社会倫理は、縁起的生命観に支えられている。「一切の生きとし生けるものは幸せであれ」(『スッタニパータ』一四七偈)「すべての者は暴力におびえる。すべての生きものにとって生命は愛しい。己が身にひきくらべて殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。」(『ダンマパダ』一三〇偈)「世のなか安穏なれ」(親鸞『御消息集』七)等と説かれるように、仏教を機軸とする宗教的実践は、非暴力と平和な社会の実現を願う。
理論と臨床とを統合するために、ロールプレイ、グループワーク、スーパービジョン、会話記録検討会を行う。反省を通して、自らの課題を知る時、前に向って前進できるからである。手法はCPE(Clinical Pastoral Education 臨床牧会教育)に倣う。
①必修科目:次の6科目18単位を修得すること。
②選択必修科目(推奨科目):
次の11科目を推奨科目とし、2科目4単位以上を修得すること。
※災害や感染症からの安全を守るために、日程を変更する場合があります。
他多数。以上、敬称略。
10名以内
次の①~③のいずれかに該当し、④⑤に賛同・遵守する者。
※ 臨床宗教師・臨床傾聴士研修の審査において受講許可となった場合でも、科目等履修生制度において受講許可がされなかった場合、当該年度の受講は不可。
龍谷大学文学部教務課 臨床宗教師・臨床傾聴士研修担当
〒600-8268
京都市下京区七条通大宮東入大工町125番地の1
(1)2017年9月9日、龍谷大学大学院実践真宗学研究科・臨床宗教師研修プログラムが日本スピリチュアルケア学会認定「人材養成教育課程」として認められた。2021年および2023年10月、2024年11月にも継続して認められた。これにより、本研究科の臨床宗教師・臨床傾聴士研修修了生が日本スピリチュアルケア学会へ入会し、必要書類を整え、本研究科臨床宗教師・臨床傾聴士研修代表者宛に提出する。その後、同学会の資格審査試験に合格した者に「臨床スピリチュアルケア師」の資格が授与される。病院や社会福祉施設、教職員を目指すものにとって大きな力となる。
(2)2018年3月5日、龍谷大学大学院実践真宗学研究科・臨床宗教師研修プログラムが日本臨床宗教師会「臨床宗教師養成教育プログラム」として認められた。これにより、本研究科の研修修了生は、各地臨床宗教師会ならびに日本臨床宗教師会に所属した上で日本臨床宗教師会の認めるフォローアップ研修等を受講し、日本臨床宗教師会が定める所定の資格申請書類を本研究科臨床宗教師・臨床傾聴士研修代表者宛に提出する。その後、日本臨床宗教師会による資格審査によって認められた者に、日本臨床宗教師会より「認定臨床宗教師」の資格が授与される。
龍谷大学真宗学会、日本臨床宗教師会、日本スピリチュアルケア学会、等に入会し、研修会等で研鑽を続けることを推奨する。将来、日本臨床宗教師会の「認定臨床宗教師」資格や日本スピリチュアルケア学会の「臨床スピリチュアルケア師)」資格を取得することを希望するものは、それらに入会することが必要となる。すなわち、各大学教育機関等の臨床宗教師・臨床傾聴士研修を修了しただけでは、「認定臨床宗教師」と名のることはできないため、各地方臨床宗教師会へ所属した上で、日本臨床宗教師会への資格申請が必要となる。詳しくは日本臨床宗教師会や日本スピリチュアルケア学会ホームページを参照すること。
「臨床宗教師会フォローアップ研修」主催 日本臨床宗教師会・各地臨床宗教師会等
「グリーフケア公開講座 悲嘆に学ぶ」春学期8回・秋学期8回 主催 上智大学グリーフケア研究所 龍谷大学人間・科学・宗教オープンリサーチセンター
「浄土真宗本願寺派ビハーラ活動者養成研修会」(実践真宗学研究科推薦により受講可)
石巻市追悼巡礼 東北大学と龍谷大学合同研修 2014年
南三陸町の佐藤仁町長に表敬訪問 2017年
ハーバード神学大学院とのシンポジウム 2018年
気仙沼市すがとよ酒店ご遺族講話 2018年
気仙沼市被災した地蔵菩薩の復興 杉岡孝紀教授の法話 2018年
神戸赤十字病院心療内科 村上医師らとの研修 2018年
森田敬史教授と打本弘祐准教授 日和山・閖上の記憶での傾聴 2019年
南三陸町役場での復興支援のつどい LIFE SONGS 2019年
広島平和記念公園・追悼儀礼 2019年
超覚寺 和田住職との交流 2019年
宗教者間対話 葛野洋明教授・森田敬史教授の指導 2019年
高齢者総合福祉施設「常清の里」 2021年
折り鶴を捧げる 広島原爆記念公園 2021年
あそかビハーラ病院緩和ケア 渡辺有ビハーラ僧による研修 2021年
神戸赤十字病院オンライン研修「災害遺族のグリーフケア」 2021年
東北被災寺院の専能寺での研修 2022年
名取市閖上地区震災メモリアル公園 芽生えの塔 追悼法要 2022年