- 教員氏名
- 井上 善幸 教授
- 専門分野
- 真宗教義学
親鸞の教義について、親鸞の師である法然に向けられた明恵の論難を補助線として研究しています。基本的には親鸞の著述を文献学と歴史学をベースとして丁寧に読み込むことが必須ですが、どの文献も先行する書物や同時代の書物から独立して著されているわけではありません。他の文献に視野を広げるときに、特に明恵のロジックが親鸞教義を解明するひとつの手がかりになると考え、研究を進めています。
一言でいえば因数分解です。従来の真宗学で扱ってきた文献の枠を超えて、明恵をはじめさまざまな文献をより広い文脈で見渡し、どんな術語を使用しているか、どの文献を引用しているか、どのような文脈で論が構成されているかといった問題意識で考察していくと、思いもかけない共通項が見えてきます。その共通項からさらに共通因子を求めていくと、一見かけ離れた叙述から共通した課題を括り出すことができます。
学部時代はもともと比較思想を学んでいました。思想の比較においては直接、間接に影響関係があるものだけでなく、時代も地域もかけ離れた思想同士を、その構造において比較するという手法が採られます。この場合、比較の主体の問題意識が重要な意味を持つのですが、真宗学とはまさしく、この私が問われる学問であると考えています。