普段はアラビア語で書かれたものをひたすら読んでいます。こつこつ読む作業は砂をかむようだけれども，研究には欠かせない，というようなことを，私が学部の学生だった頃に言われたことがあります。確かにその通りで，地味な作業ですが，これを続けていると，当時の人々の悲喜交々が見えてくる時があります。現代の私たちと似通っているように思えたり，その逆であったり。過去を研究していながら，逆に現在を考えさせられるところが，おもしろみかなと思います。

高校生の頃に読んでいたマンガや，大学生の頃に見た映画『アラビアのロレンス』などが中東の歴史や人々に興味をもったきっかけの一つでした。肩ひじ張って読んだり観たりしたわけではありませんが，同時に難しく考える部分もありました。人間は好むと好まざるとにかかわらず，いろいろな「枠」の中にいて，その「枠」もいつも同じものとは限らない。一体どのような「枠」に左右されて，どのように生きているのか。現在の自分の研究ともつながっています。