- 教員氏名
- 河野 淳子 教授
- 専門分野
- 言語学、英語教育
専門分野は語用論です。語用論は言語学の一分野で,発話をその発話者や文脈の関係から研究する分野です。子どもは少なくとも10歳くらいにならないと,皮肉のような語用論的発話の解釈ができないといわれ,ヒトのこのような能力の獲得については数多くの研究が存在しています。しかし語用論的な能力の喪失についての研究はまだ始まったばかりです。認知症高齢者にとってはこのような語用論的発話の解釈が難しいということがわかってきましたが,認知症高齢者がなぜ他者とのコミュニケーションが難しくなるのかについて,語用論的な視点から研究しています。
発話を解釈する場合,発話の「字義どおりの意味」と発話者の「意図した意味」が一致するとは限りません。ヒトはコミュニケーションにおいて,実際には発話されていない「言外の意味」も含めて,相手の発話を解釈しようとします。ことばを使ったコミュニケーションを行うのはヒトだけだといわれていますが,じつはこのコミュニケーションには,ことばとして表現されているwhat it saidと表現されていないwhat is unsaidが関わっています。言語学の中の,言語として表現されていないものも扱う研究というのが,何だかおもしろそうだとは思いませんか。
とくに明確な目的があったわけではありませんが,今ではこの分野を専門としたことで,老親を(少しだけですが)客観的に見ることができ,優しく接する気持ちがうまれてきました。