- 教員氏名
- 中木 愛 准教授
- 専門分野
- 中国古典文学(唐詩)・中国語
中国の唐代の詩を、白居易や杜甫、賈島などを中心に研究しています。唐詩の語彙や表現を従来の用法と対照しながら、言葉づくりのメカニズムや創意工夫を探り、詩人たちの思いを読み解いていく研究です。白居易の詩には、「朧月」や「草庵」など、海を渡って日本の和歌に取り込まれ、日本人独特の美意識を形成するもととなった詩語があります。最近は、日本における受容の在り方についても考えています。
たとえば、印象的な出来事があったとして、それをどのような思い出に残すかは、一篇の詩を作る行為に通じます。人の記憶は曖昧ですが、言葉によって情景や感情は鮮やかに浮かび上がり、新たな解釈を施すこともできる。それは、外の世界を観察し、自己の内面と対峙し、瞬間瞬間の“生”を精一杯愛おしむ営みとも言えるでしょう。漢詩の言葉は、辞書的な意味の奥に豊かなイメージがぎゅっと凝縮されています。そこに込められた真摯な思いに触れられるとき、私たちの心も豊かになります。
中学生のとき、所属していた合唱団(ハンドベルクワイア)の演奏旅行で、中国を訪れる機会がありました。雄大な大地、ゆったりとした時の流れ、現地の人々が話す中国語の心地よい響きに魅了され、「私は前世ここにいた!」と感じました。 漢詩の授業が好きだったこともあり、大学では中国文学専攻に進みました。高校までに習った漢詩は悲哀の情が多かったため、個人の歓びをうたった詩も読んでみたいと思い、卒業論文のテーマに白居易の花の詩を選んだのが研究のきっかけです。