- 教員氏名
- 丹野 研一 准教授
- 専門分野
- 考古植物学、遺伝育種学
人間と植物のかかわり合いについて研究しており、とくに考古植物学と品種改良をやっています。人類史のターニングポイントと言われる「農耕のはじまり」をあきらかにしようと、西アジア各地の考古遺跡で発掘調査に参加して、出土した炭化種子や炭化材を顕微鏡で見て種類の同定をするというものです。日本には専門家がおらず、私はフランスで2年間修行を積みました。もうひとつの品種改良というのは、小麦の仲間に新しい品種を作りだす農業的な研究です。西アジア原産である小麦の仲間は、世界ではたくさんの種類が利用されていますが、日本にはスパゲティの原料であるデュラムコムギさえも最近までは品種がなかったという始末です。考古学や民族学の調査研究をもとにして、現代の日本でおいしく食べられるさまざまな小麦を生み出そうとしています。
「農耕起源」というひとつのテーマを解明するために、様々な知識を動員して考えるところが楽しいです。分野でいうと植物分類学や、生態学、分子生物学、先史学(考古学)、育種学、栽培・作物学、栄養学、生薬学、語学などといった、多岐にわたる知識・技術を身につけるわけです。そして知れば知るほど新たな解釈につながって、じつは誰も気づかなかったシンプルな真理に結びついていた、なんて発見があるのでとても充実しています。発掘では動物学者とか石器学者とか、それぞれの専門家と議論するわけですが、植物担当者として全責任を負って意見を述べるスリル感と、議論から研究が新展開するときの感覚が研究者冥利というところでしょう。品種改良のほうは、とにかくパンにして、パスタにして「おいしい小麦」(じつはそういう品種改良は、行政育種ではおこなわれていないのです!)という曖昧なところを明確な目標にして取り組んでいます。
実質的には学生だったころの貧乏生活で、食べる野菜を山に求めたことが契機でした。当初は植物名を覚えることにはそれほど関心がなく(それどころでなかった)、可食か否か、うまいかまずいかで植物を理解していました。それが狩猟採集民と農耕起源の研究につながるとは!