文化財科学・保存科学は、博物館などの運営を陰で支える黒子的な役目です。一方、文化財科学のおもしろさは、調査中に肉眼だけでは発見・確認できなかった事実が新たに分かることだと思います。X線撮影をして予想していない内容物が見つかった例は分かりやすいのではないでしょうか。また、研究や調査内容が一般の人に知ってもらえ、文化財に関心を持つ人が増えることは楽しみの一つです。

もともと文化遺産に興味を持っていましたが、大学院では化学分野を専攻し日々化合物を合成し、物性の研究を行ってきました。研究をしながら学んでいた学芸員科目で、化学を用いた文化財科学・保存科学という専門があるのを知り、興味を持ちました。縁があり、全国の文化財を調査・修理する民間の研究所に就職でき、様々な現場で化学を用いた文化財の調査や修理を行うことができ、現在に至ります。