- 教員氏名
- 吉田 叡禮 教授
- 専門分野
- 中国仏教史
私は華厳思想を中心に中国仏教思想史を研究しています。主に唐代から宋代にかけて漢民族社会にみられる思想の変遷に関心があり、それがどのような社会状況の下で起こった現象であり、周辺諸国・諸地域にどのように影響を与えたかを明らかにしていくことを目的としています。
歴史は一人一人の思想や生き様の蓄積と連鎖であるといえます。その中には名を残した人だけでなく、名も無き人びとの営みも含まれます。私たちもその中にいます。
仏教は基本的に個人の心の安楽を目的としますが、特に中国仏教についていえば各時代・地域の社会状況と無関係ではあり得ません。学派の動向のみならず、時代・地域の思想傾向、民族、政治経済、地理や流通、寺院や人物を支えるスポンサーの社会的身分や立場など、多くの条件が絡み合っています。また、思想を構築してきた人びとは過去から受け継ぐ智の伝統の上にあると同時に、当時の社会、そして未来の世界を見据えて生きています。それを叙述する後世の人もその中にいます。
先徳の生をたどる行いは、自らの生を確認し確信する行いでもあり、現在、そして未来を構築する手段ともなります。それを問い続けることには悦びがあります。
私は多くの恩師のご教導に浴する中で華厳思想に出会い、学んでいるうちに、華厳思想が東アジアの多く仏教者たちの思想に深く影響を与えていることが見えてきました。しかも華厳思想は固定的なものではなく、時代に伴って課題や説き方が変化します。それに対して、「なぜ?」、「どのように?」をくり返し、多角的に追及していくうちに、いくら学んでも尽きない楽しさを覚えました。