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Faculty of Letters

文学部

学部長メッセージ

海にあそぶ

文学部長 安藤 徹

江戸時代の俳人、小林一茶に「天に雲雀(ひばり)人間海にあそぶ日ぞ」という俳句があります。この句は、雲雀が飛ぶ大空のもと、広々とした浜辺で潮干狩りを楽しむ人々を詠んでいます。五・七・五の言葉の世界に織りなされた情景は、なかなか堂々としたものです。さらには具象的な情景を越えて、「人間」そのものの本質を「海にあそぶ」ことに譬えているようにも読みなされます。なるほど、人生とは海にあそぶようなものかもしれません。

文学部は「人文学」を学ぶところです。「人文」とは、人が書いたものを含めて人間にかんすることがらを意味します。したがって、人文学は「人間とは何か」「人生とは何か」という問いをめぐる学問だと言えます。人生とは海にあそぶようなものだとすれば、(譬えとしての)「海にあそぶ」とはどういうことかを深く考えるのが人文学であり、文学部での学びなのではないでしょうか。

ここで見逃していけないのは、「人文」の「文」です。文学部の「文」です。文学部は「文」の学部です。「文」とは「言葉」のことです。「言葉」の学部が文学部なのです。言葉そのものを学ぶだけではありません。言葉によって思考され、感じ取られ、編まれ、伝えられてきたものごとを学び、それらを通じて人間とは何かを問う場が文学部です。宗教も哲学も教育も心理学も歴史も文学も、言葉なしにはありえません。さまざまな社会現象も同じです。人間存在の根本に「言葉」があるのでしょう。私たちがあそぶ「海」とは、まず何よりも「言葉の海」です。

『舟を編む』という三浦しをんさんの小説があります。国語辞書づくりの物語です。辞書の名前は『大渡海』。まさしく、辞書とは言葉の大海原を渡るための舟にちがいありません。あるいは、辞書とは言葉の海の広さや深さを実感させてくれるものでもあります。その点では図書館も同じです。第10回龍谷大学青春俳句大賞の文学部部門の受賞作に「本の海文字を釣ってる夏休み」(林楓さん、当時高校2年生)という句がありました。学術情報の宝庫である大学図書館は、「本の海」でもあり「言葉の海」でもあります。龍谷大学図書館が所蔵する本は約220万冊にも及びます。その海にあそび、海を泳ぐために龍谷大学図書館のホームページに用意されているのが、R-WAVE、R-OCEAN、R-SHIPといったツールです。いずれも海にちなんだ名称がつけられているのは、けっして偶然ではないでしょう。

(言葉の)海は広く、そして深い。多様であり、かつ複雑です。命を育み、同時に命を奪います。慈しみ深く、しかし恐ろしい。生成しつづけ、流れつづけるダイナミックな海は、一筋縄ではいきません。人間社会も同様です。まずは、そうした海を正しく知る。そして海にあそぶ人間(私と他者)をじっくり見つめ、深く考える。さらに、海を泳ぎ、海を渡り、海を走ることのできる力を身につけていく。「しんしんと肺碧(あお)きまで海の旅」(篠原鳳作)。そうした経験のできるのが龍谷大学文学部です。

なお、「あそぶ」という言葉からどこか不真面目で不謹慎な響きを感じる人がいるかもしれません。しかし、けっしてそうでないことは、多くの「あそび」論がすでに指摘していることです。詳しくはまた別の機会に一緒に考えてみましょう。

文学部長 安藤 徹

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